東日本大震災遺児の若者が集う「にじカフェ」
震災遺児が成人しても続くグリーフケア
「にじカフェ」とは、東日本大震災で親を亡くした若者が同じ経験を持つ仲間とつどい、グリーフに寄り添い受け止めてくれる大人(ファシリテーターや職員)とともに、安心して過ごせる場として作られた1泊2日のプログラムです(18歳以上を対象)。2015年より、あしなが育英会が「仙台レインボーハウス」(宮城県仙台市)で、6月と12月の年2回、開催しています。
東日本大震災遺児支援のために東北レインボーハウス(仙台・石巻・陸前高田)で行われている心のケアプログラムは、原則として、高校生までを参加対象としています。しかし、幼少期から参加していた震災遺児たちが、高校卒業後にも「参加者の同窓会がしたい」、「故郷に戻る場所が欲しい」と希望したことで、「にじカフェ」が始まりました。
震災当時の遺児たちの中には、成長とともに進学や就職などで地元を離れ、ひとり暮らしをしている人も多くいます。一般的な若者のひとり暮らしとは異なり、震災により“実家”を失った人や、さまざまな事情で実家では安らげない人(例:実家が転居し居場所がない、祖父母宅に帰るが落ち着かない、震災で家族関係が変化し帰りたいと思えないなど)もいます。
「にじカフェ」は、皆で温かい食事を囲み、互いの話に耳を傾け合ったり、浴場や寝室も複数人で過ごしたりと、他者とともに過ごす時間を提供しています。届けたいのは、 “実家に帰った”ような気持ちになれる、安心・安全な「居場所」。震災遺児が、グリーフを抱えながらも、人とのつながりを育み、社会で前を向いて歩めるよう支えることが目的の一つです。
※ファシリテーター:研修を受けてプログラムに参加するボランティア
※グリーフ:大切な人やものを失ったときに生じる、自然な心の反応のこと。さまざまな感情や身体反応を含む

キッチンで、役割分担しながら一緒に料理

皆でわいわい食べる食事は、心も満たしてくれます
再会と近況をわかちあう2日間
2025年12月6日(土)と7日(日)に開催した「にじカフェ」には、18歳から30歳までの若者14人が参加し、ファシリテーター8人、職員7人とともに過ごしました。
この2日間、仙台市内は雪模様で、前日には2〜3センチの積雪も。寒い中、各地から集まる参加者にホッとするひとときを提供しようと、仙台レインボーハウスでは、季節の飾りつけやこたつで会場を作り、手作りの食事を用意して若者たちを迎え入れました。
「にじカフェ」は、自分の気持ちを丁寧に言葉にし、仲間の声にも耳を傾ける――そのやりとりを通して、心がつながる場であることを大切にしています。温かい食事や飲み物を囲み、リラックスした雰囲気の中で、お互いに自身の近況を語り合いました。

それぞれが自分に向き合う時間。安心できる空間で思いや考えを書き留めます(おしゃべりの部屋にて)

お互いの考えや気持ちに耳を傾け合いました(リビングにて)
長い転職活動を経て、他県の新しい職場で働き始めたことを報告してくれた参加者は、「途中入社だから、同世代に比べて今はできることが少ないことが悩み」と語りながらも、「資格取得を目指し、現場に貢献できるよう頑張りたいと思っています」と前向きな言葉を伝えてくれました。
また、うれしい報告もありました。
一人は、自ら挙手して婚約を発表。全員から盛大な祝福を受け、本人も満面の笑みを見せてくれました。もう一人は、妊娠9か月を迎え、間もなく出産することを報告しました。
就職、結婚、出産など、人生の節目を迎えた参加者たちが、すでにその経験を持っている年上の仲間たちやファシリテーターから体験談や意見を聞いたり悩みを相談したりすることもあります。反対に、年下の仲間たちが「いつか自分も親になるときが来るのかな」と、自分自身に未来のビジョンを持つきっかけとなることも。
「にじカフェ」はまるで、大きな家族の団らんの場となり、震災遺児たちの人生を見守っています。
「またここで会える」ことの意味
「子どもの頃によく会っていた仲間と、今もこうして会える機会は限られています。とてもありがたいです」という10代の男性は、震災当時、わずか3歳でした。4歳から母親と一緒に石巻レインボーハウスに通い始め、皆勤賞といえるほど足を運んできました。ひとりっ子の彼にとって、レインボーハウスで過ごす仲間は兄や姉のような存在。「にじカフェ」でも、気がつけば昔と変わらず、“お兄ちゃん・お姉ちゃん”のそばで過ごしていました。
ほかの参加者やファシリテーターの言葉からも、この場が、震災遺児のグリーフケアと成長にとって、とても大事な居場所になっていることが伝わってきました。
「未成年の頃は親の都合で、あまり頻繁には来られなかったけれど、今は昔来られなかった分も、と思ってにじカフェに来ています」(20代女性・参加者)
「自分と同じような職業の人と会えて、話が合う人が多くてうれしかった」(20代女性・参加者)
「(にじカフェが)とっても大切なみんなの実家なんだなと思いました。“なくてはならない(居場所)”、“いつもここにいるからね”というメッセージを感じました。温かい飲み物、食事、お風呂、お布団、こたつ、(クリスマス)飾りなどなど、足を踏み入れた瞬間から包まれる…そんな場所に参加者もほぐれて、そして、日々の糧になっていける…貴重な時間、宝物だと思います」(ファシリテーター)
3.11から15年―震災遺児の居場所づくり(担当職員メッセージ)
「にじカフェ」を11年継続してくるなかで、居場所が人の成長にとってどれほど大切かを改めて感じています。参加者が安心して自分の思いを話し、仲間やファシリテーター、職員とつながる姿はとても印象的です。幼い頃から通ってきた子どもが、成長しても変わらず仲間との絆を大切にしている姿を見ていると、継続的な支援の意味を実感しました。
また、結婚や妊娠、仕事復帰など人生の節目を迎えた人が、自然と周囲の励みになっていたことも、「人とのつながりを育むにじカフェ」の大きな手ごたえだと感じています。
こうした経験から、居場所は「子ども時代」だけではなく成人後でも、その人のライフステージに応じて必要とされるものだと感じています。
例)
・18歳前後:進路や将来への不安を話せる場
・20代前半:新しい環境で悩みを共有できる場
・20代後半~30代:結婚や子育ての相談ができる場
・30代以降:キャリアや生活の再スタートを支える場
居場所は、年齢を超えて「安心して話せる場所」であり続けることが大切です。
これからも、変化するライフステージに寄り添う柔軟な支援を目指していきたいと思います。
今後の開催について
2026年度以降は、宿泊型プログラムを年2回、日帰りプログラムを1回の計3回開催することを目指しています。これまで参加できなかった震災遺児の方も、ぜひお気軽に参加してください。










