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「3人でも頑張っていける」家族を支えたLSPの時間【LSPインタビューvol.12】

あしなが育英会は2020年10月より、小中学生対象の学習支援「ラーニングサポートプログラム(LSP)」という取り組みを行っています。LSPでは本会奨学生の大学生が中心となり、遺児家庭の小中学生にオンラインで学習指導を主とするサポートをしています。   

 

◇ラーニングサポートプログラム(LSP)の詳細はこちら  

小学生LRの親子インタビュー

今回はvol.11でインタビューしたLS(*1)田中さんのペアであるLR(*2)のモモハさんとお母さんにインタビューしました。公文式(*3)を使って実力を伸ばしているモモハさんがLSPを通して学んだことや感じたこと、お母さんが感じているモモハさんの変化など、お話を聞きました。

 

*1 LS:学習サポートをしているあしなが育英会奨学生を中心とした大学生    (ラーニングサポーター)

*2 LR:学習のサポートを受けている遺児家庭・障がい者家庭の小中学生 (ランナー)

*3 2022年から公文教育研究会と協働してオンラインによる公文式学習(小学生・算数限定)を導入しています。

 

――モモハさんについて自己紹介をお願いします。

 

モモハさん:小学5年生です。趣味は絵を描くことで、よく友だちと好きなキャラクターの絵を描いています。特技は習字で、幼稚園から5年くらい続けています。今年のお正月には武道館で書き初めを行いました。あとは、ルービックキューブも得意です。

 

 

好きな絵で入賞した作品を見せてくれるモモハさん

 

――LSPに参加しようと思ったきっかけはなんですか?

 

お母さん:私がとても心配性で、自分ひとりではモモハの気持ちをフォローしきれていないと感じていました。というのも、モモハは普段本当に泣かない子なんです。なので、言えないことがあったりする時に、誰か聞いてもらえる相手がいればいいなと思っていました。そんな時にLSPの案内があり、大学生に勉強を教えてもらえるだけではなく、お話をして関わりを持ってくれると知り、参加を決めました。

LSPで「公文式」を使い、計算のスピードがアップ!

――LSPのセッションではどんなことを勉強していますか?

 

モモハさん:主に公文式を使って算数を勉強しています。時間が余ったら地図あてクイズをして、4年生の時にコロナで勉強できなかった都道府県を勉強しています。

 

――公文式を利用してみようと思った理由はありますか?

 

お母さん:クラスの賢い子たちが学研や公文式に通っていて、モモハから「塾に行ってみたい」と言われていました。しかし、上の子の受験が重なったことで、モモハも塾へ通わせるのは経済的に厳しいと思っていました。そんな時に、LSPで公文式ができるという話を聞いてちょうどいい機会だと思いました。初めは公文式といえば教室に通うものだと思っていたので、オンラインでできるのか疑問でしたし、ずっと計算するのはモモハが嫌がると思っていましたが、今ではとても楽しんでいます。

 

――モモハさんは公文式を利用して良かったと思うことはありますか?

 

モモハさん:公文式はたくさん計算があって大変ですが、解けば解くほど計算が速くなっていると感じて嬉しいです。学校の計算大会で以前は100マス計算のタイムが3分だったのが、今は1分でできるようになりました。また、算数の勉強でも計算が速くなりました。学校の算数のテストで も、今までは何問かミスをしていたのですが、最近は毎回100点を取れています。

 

――100点はすごいですね!お母さんから見て、LSPで公文式を始めてからモモハさんの成績に変化はありましたか?

 

お母さん:今まで算数が少し苦手で、通信簿で算数に「よくできました」が付いたことがなかったです。でもLSPを始めてからある日、「すごいでしょ!」と算数に「よくできました」が付いた通信簿を見せてきたことがありました。自分から見せてくることは今までなかったですし、いつも自信なさげだったのでとてもびっくりしました。きっとモモハに「誰かに教えてもらった!やったんだぞ!できるぞ!」という自信が付いたのではないかと思います。

 

――モモハさんの自信がとても現れていますね!モモハさんは公文式を始めてからできるようになったことはありますか?

 

モモハさん:公文式で計算を練習してから間違えることが少なくなりました。あとは、1桁の足し算から始めて、2桁、3桁と増えていったのですが、1桁の計算が早くなると2桁、3桁の難しい問題を速く解くことができるようになりました。それに、最近は引き算の問題を解いているのですが、LSの田中さんが「繰り下がりに気をつけてね」など声をかけてくれるので、意識して気をつけることができるようになりました。

 

お母さん: 公文式は思ったよりゲーム感覚で楽しんでいるのかなと思いました。反復の練習は自分ひとりでやると嫌になってしまうと思うので、誰かが声をかけてやってくれるだけで違うと思います。

 

 

家でも黙々と勉強を頑張るモモハさん

会えなくなるのが寂しいと感じるように。

――お母さんから見て、LSPに参加する前と後で、モモハさんに変化はありましたか?

 

お母さん:生活面のスイッチの切り替えがとても上手になったと思います。例えば、LSPのある月曜日の夜7時には「田中先生が教えてくれる!」と張り切って、LSPの時間までにお風呂に入るようになりました。サボろうと思えばサボれることでも、自分で計画してLSPのスケジュールに合わせてすべて終わらせています。

 

――LSPを楽しみにしているのが伝わりますね。モモハさんは田中さんとどんなお話をしているのですか?

 

モモハさん:学校であったことを話しています。例えば、音楽委員会に入っている話や、金管クラブで演奏した話をしています。

 

――お母さんはモモハさんから聞いた話で印象的だったことはありますか?

 

お母さん:モモハはLSPのことをあまり話さないんですよ。でも珍しいなと思ったことが1つあって。モモハは父親を亡くしてから、寂しくても寂しいと言わなくなってしまって、人とお別れすることに諦めを感じるようになり、少し冷めてしまったのかなと思っていました。でも年末頃に、「田中先生にずっと習えるの?」と聞いてきたことがありました。田中さんは大学4年生で、(4月からは)お仕事があるから(サポーター役は)3月までということを伝えたときに、「あと3ヶ月しかないのが寂しい」と言ったことがありました。父親を亡くしてから「寂しい」と全く言わなくなったモモハが、実際に対面で会ったことが無い田中さんと会えなくなるのが「寂しい」と言ったことがとても印象的でした。モモハはLSPの時間になると、部屋の扉を全部閉めて誰も部屋に入れないので何を話しているのかわからないのですが、モモハが田中さんに心を開いていろんなことをお話ししているのかなと思っています。

 

――モモハさんが田中さんに心を開いているのが伝わります。

 

ルービックキューブをするモモハさん

 

LSPを通して「3人でも頑張っていける」と思えるようになった

――お母さんはLSPのいいところはどこだと思いますか?

 

お母さん:身内や親の目線だと子ども扱いしてしまって、感情論になったり自分の意見を押し付けたりしてしまうことがあります。でもLSPで出会う方は、勉強を教えるだけでなく、少し年上のお姉さんでモモハと近い感覚を持ちつつ、人生の先輩として話ができるところがとてもいいなと思います。家族を亡くしてモモハと同じ思いをしている田中さんが、今明るく教師を目指している姿を見て、モモハ自身も「大学生になれる」「大人になれる」ということを感じていると思います。モモハには大学生の近い知り合いはいないのですが、本人から「大学生になりたい」「勉強をちゃんとしたい」と言うようになりました。きっとモモハにとって田中さんは、かっこいいお姉さんの感覚なんだと思います。

 

――LSPの存在がモモハさんにとって、とても大きなものになっているのですね。

 

お母さん:そうですね。モモハだけでなく私たち家族にとっても、とても大きな影響を与えてくれました。あしなが育英会から奨学金を受けている高校生の兄がいるのですが、LSPの存在を知るまでは奨学金を利用することにあまりいい気持ちがしないと言っていました。でも、モモハがLSPに参加していることを伝えたときに、お金を返す以外にも自分と同じ境遇の人たちに恩返しする方法があるという意識が芽生えたようで、兄にもいい影響がありました。兄は「大学生になって頭がよかったらLSをやってみたい」と言っています。

 

モモハは小学2年生で父親を亡くしてから、すぐコロナの時期になり、人と会うことや近距離でいることが禁止されていました。兄は1年ほど不眠になり、朝起きられない状態になってしまいました。その状態が続いて私自身も1年後に倒れて入院してしまいました。その家族の状態を一番近くで見て、一番我慢していたのがモモハだと思います。でもモモハはおじいちゃんやおばあちゃん、先生に何を聞かれても「私は大丈夫」と言う子だったので、とても心配をしていました。でもLSPを始めてから、部屋から笑い声が聞こえたり、自分からやりたいということが増えたり、すこし安心できるようになりました。いろんな心配が緩和されました。

 

モモハの変化が家族全体を変えていき、「3人でも頑張っていける」と思えるようになりました。

なにかを頑張ることの大切さを学んだ

――モモハさんは今後LSPで頑張りたいことはありますか?

 

モモハさん:算数の計算がもっと速くできるようになりたいです。クラスの中では10位以内に入れるのですが、学年だと入れないので、学年でも10位以内に入れるようになりたいです。

 

――将来の夢や今後やってみたいことはありますか?

 

モモハさん:将来の夢はピアニストになることです。お母さんはピアノが上手なので、一緒に連弾をしたりして練習しています。その他にもキーボードやウクレレ、ギターやカリンバなどいろんな楽器に挑戦しているので、中学校では吹奏楽部に入りたいと思っています。

 

――最後に、田中さんへのメッセージがあればお願いします。

 

お母さん:田中さんには本当に感謝しています。4月から先生になられるということで、きっと高校時代から教育の道を目指して努力されてきたと思います。高校時代にお母さんを亡くし辛いことがあったと思いますが、それでも「夢を叶えることができるんだ」ということをモモハにも、私自身にも教えていただき、すごく感謝しています。

 

モモハさん:一年間、私に勉強を教えてくれてありがとうございました。おかげで私は算数の計算も速く解けるようになったし、なにかを頑張ることの大切さも分かりました。本当に感謝しています。

 

 

モモハさんから田中さんに宛てた手紙

 

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