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グリーフケアを積み重ねて-12回目の3.11に寄せて

まもなく震災から12回目の3月11日を迎えます。

支援拠点である東北レインボーハウス(宮城県仙台市、石巻市、岩手県陸前高田市)では定期的な心のケアプログラム開催のほか、その時々にあわせた新たなプログラム導入も試みながら、子どもたちや家族の声に耳を傾け、共に歩んでまいりました。

 

心のケア事業について

グリーフケアとレインボーハウス

死別や喪失を経験すると、誰にでも「グリーフ(grief)」と呼ばれるさまざまな感情・反応があらわれることがあり、子どもたちも例外ではありません。グリーフは、頭痛や腹痛など身体の不調として現れる、対人関係がうまくいかなくなるなど、日常生活に影響を与える場合もあります。

 

レインボーハウス施設内には、子どもたちが抱いているさまざまな気持ちやエネルギーを表現し、お互いの顔を見ながら語り、聴くことのできる「おしゃべりの部屋」や、自分も相手も傷つけずに大きなエネルギーを表現できる「火山の部屋」など様々な部屋があり、子どもたちと保護者の気持ちを受け止めてきました。

 

おしゃべりの部屋

 

火山の部屋

 

また本会のグリーフケアでは、「ピア(仲間)」、「シェア(分かち合う)」、「エンパワーメント(本人の力能が発現できる関わり)」、「モデル(誰かの歩みを参考にする)」の4つを大事な構成要素として運営しており、定期的にケアプログラムを開催しています。

 

2020年秋に実施したアンケートでは、子どもたちがレインボーハウスでのプログラムや遺児同士の交流を通して、学校で培う力とは異なる力を身に着けていることがわかりました。また、日常生活の「合間」にあるレインボーハウスでの時間がはぐくむ「ひとりじゃない」というつながりの感覚が、子どもたちと家族の日常生活を支える大きな力となっていることがわかっています。

支援実績

期間:2011年4月11日~2022年12月31日

●東北レインボーハウスでの心のケアプログラム参加者
  子ども 5,725人(延べ)
  保護者 2,949人(延べ)

 

ファシリテーター養成講座*(於 東北レインボーハウス)
  開催数 39回
  参加者数 726人(延べ)

 

*講座では、ファシリテーター(手助けする人)になるための知識習得と身体を動かすロールプレイ体験などを通して、子どもに寄り添い、共に過ごすために有効なスキルを学んでもらいました。受講者が自分自身のグリーフを振り返る時間や、自分自身のケア(セルフケア)について学ぶ時間も設けています。

東北レインボーハウスでのケアプログラムの様子(すべて2022年)

 

ファシリテーターさんと一緒にお絵描き

 

ブックデーのようす。絵本を読む子どもたちと、見守るスタッフ

 

寄贈されたピアノで遊ぶ子どもたち

 

ワークショップでリースを作る保護者

 

久しぶりに開催できた2022年のクリスマスコンサート

 

ファシリテーター養成講座の様子

子どもたちの声を聴き、積み重ねてきたグリーフケアの成果

今や震災津波遺児の7割以上が、18歳以上の大学生や社会人となりました。

 

中には、本会を通じて震災体験や自分の思いを社会に発信するようになった子、「一緒に遊んで話を聞いてくれたファシリテーターのようになりたい」と自分もファシリテーターになった子もいます。今やサポートを受けるだけでなく誰かのサポートができるほどに成長しました。他方、成長することでプログラムから足が遠のいた子もいます。

 

子どもたちの参加が減ること自体は自然なことであり、悪いことではありません。成長した子どもたちが落ち着き、自分の力で頑張れる状態が続いているのは、レインボーハウスが積み重ねてきたグリーフケアの、目に見える成果と言えるからです。

 

しかし、「親との死別」という経験は、時間が解決するものでも治るものでもなく、常に現在進行形でそこに在ります。

支援ニーズも、子どもの成長とともに変化していきます。

 

たとえば18歳以上となり、従来のケアプログラムには参加しなくなって、ひとり暮らしを頑張っている若者たちの間には、「みんなでご飯をたべたいな」、「色々な悩みをみんなで話せる場があったらいいな」などのニーズがあることがわかりました。
そこで2015年から、高校を卒業した学生や社会人など様々な状況にあるケアプログラムの元参加者たちが集まり、互いに歩みを共有し、ロールモデルを見つけ、人生を考える場として、「にじカフェ」を不定期開催しています。

 

このようにレインボーハウスでは、子どもたちをまるごと受け止め、当事者同士の出会いや経験を共有できる環境づくりを今後も継続し、未来への一歩をサポートしていきたいと考えています。

レインボーハウスのこれから

近い将来、東北レインボーハウスの支援対象を拡大し、東日本大震災による遺児のみならず他の要因による遺児も受け入れていくことを検討しています。先だって、仙台レインボーハウスでは一部受け入れを開始しています。

 

また、東北レインボーハウスに蓄積された知見を地域に還元し、地域全体の子ども支援に活かしていきたいと考えています。
ニーズ把握も進めながら他の子どもサポート団体と協力し、地域の子どもたちの居場所や子ども支援に関わる大人のための研修や交流の場所としてレインボーハウスを活用していきます。

ご支援くださった皆様へ

これほど長い間、東日本大震災遺児へのグリーフケアを積み重ね、子どもたちの成長を見守り続けることができましたのは、ご寄付者の皆様をはじめ、レインボーハウスの活動を理解し応援してくださった皆様のおかげにほかなりません。

本当にありがとうございました。

これからもどうか温かいご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

 

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