「父のように自ら死を選ぶ人が少しでも少なくなって欲しい」ベストファーザー賞で学生がスピーチ
6月2日、日本メンズファッション協会主催の「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」授賞式にて、日本メンズファッション協会からチャリティ募金のご寄付をいただきました。
1972年の開始以来40回目の節目にあたる今回は、歴代のベスト・ファーザーが一丸となってご支援くださいました。
ご寄付の贈呈式には、本会より専務理事の岡崎祐吉と大学奨学生の田沢花梨(たざわ・かりん)さん(武蔵野大学2年生)が出席し、本会の遺児支援活動についてご報告すると共に、ご尽力くださったベスト・ファーザーの皆様に感謝をお伝えしました。
「私にとってのベストファーザーは今も変わらず父です」
幼い頃に父を自死で亡くした花梨さんは母と二人で様々な困難を乗り越え、あしなが育英会の奨学金を得て、現在は本会奨学生のための学生寮、「あしなが心塾」(東京・百草)で多くの学生と生活をともにしながら学業に励んでいます。
「私にとってのベストファーザーは今も変わらず父です。私は父のように自ら死を選ぶ人が少しでも少なくなって欲しいと願っています。自分と同じように親をなくした人々を支えたいと思うようになり、大学では社会福祉学を専攻しています。」
会場に集まった数百人の観客を前に、落ち着いた様子で話してくれた花梨さん。
困難さえも力に変える学生の熱い想いに、会場は静かな感動に包まれました。
「黄色いリボンキャンペーン」によるご支援も
「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」は、各界の最もすてきなお父さん=「ベストファーザー」に贈られる賞です。今年は、6人ものお子さんを育てるお父さんとして有名な、俳優の谷原章介さん(48)や、元プロサッカー選手の中村憲剛さん(40)など、5名の方が選ばれました。
この賞とあわせて、親のいない子どもたちのためのチャリティ募金「黄色いリボンキャンペーン」も同時開催されており、2004年以降、キャンペーンで集まった温かい募金も本会にご寄付くださっています。
花梨さんのスピーチをご紹介します
本日はお招き頂き、ありがとうございます。
あしなが育英会奨学生の田沢花梨と申します。ベストファーザーの皆様、この度はこのような温かいご支援を頂き、誠にありがとうございます。このような場で感謝の思いを伝えられることをとても嬉しく思っています。
私にとって奨学金はただのお金ではありません。奨学金によって、学生時代というかけがえのない時間を得ることが出来ました。その時間は、進学しなければ得られなかった友人、知識、経験など、全ての糧になっています。幼い頃に父を亡くし困難にぶつかったこともありましたが、母は一人で私を育ててくれました。奨学金がなければ、私は大学へは進学できなかったかもしれません。
そんな私を今でも支えてくれるのは父との思い出です。父のくれた温かな愛情は忘れることができません。私にとってのベストファーザーは今も変わらず父です。
私を愛してくれた父も、私たち家族から離れていってしまいました。私は父のように自ら死を選ぶ人が少しでも少なくなって欲しいと願っています。そして父が置かれたような厳しい環境を減らし、より良い社会に変えたいと考えています。
自分と同じように親をなくした人々を支えたいと思うようにもなりました。そんな思いから、大学では社会福祉学を専攻しています。
地元から上京し、あしなが心塾という寮で、他の大学奨学生やアフリカからの留学生と共同生活しています。大学で専門知識をつけ、寮で多様な価値観を知ると、より世界が広がって見えてきました。支援を必要としている人以外にも、支援の対象から外れ、困難な状況に置かれている人の存在を知りました。自分があしながを通じて支援していただいた分、またそれ以上に、人々を支える仕事に取り組みたいと考えています。
支援を広めていくことだけに留まらず、社会を変えていくことが目標です。とても難しい課題かもしれませんが、今の私はそれにチャレンジできる環境にあります。
こうしてこの場に立っていられるのも、ひとえに皆様方のおかげでございます。
もう一度、心よりお礼申し上げます。
ご清聴ありがとうございました。