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「いつもアリーナの最後列から応援しています」-あしながさんインタビュー

「社会問題には、熱量のある当事者だけが関わればいい。そんな思い込みをなくしたいですね」。そう語るのは、2008年から13年間にわたり本会に寄付を続けてくださっている山本さん(仮名)(30代自営業・男性)だ。

「生き方に惹かれた」社会起業家との出会い

山本さんは大学時代、学外での活動に注力し、社会起業家が集まる交流会に頻繁に足を運んでいた。大学内では得られない視点、その空間でしか出会えない人々。すべてが刺激的で新鮮だった。「信念を体現すべく活動する人たちってかっこいい」。いつしかそんな人たちの生き方に惹かれ、自らも起業を志した。

 

新卒時はスキルを磨くため、プログラマーとして民間企業に就職。4年間勤めた後に独立し、現在は個人事業主として自ら立ち上げたマーケットリサーチ事業を行っている。生産家と農家さんを繋ぐサービスなどを開発し、0から1を作り出しながら日々正解のない問いを探究する。「アイディアを形にする瞬間にワクワクするんです」。その気持ちが今の仕事の何よりのやりがいだという。

 

事業に携わる傍ら、2008年頃からあしなが育英会を含む計6つの非営利団体に継続寄付を行っている。「寄付を通じて収入の一部を社会に還元し、その団体の活動を応援する。これが自分に最適な社会問題との関わり方なんです」。 継続寄付を始めてからかれこれ13年あまり。しかし、「継続寄付」という自分に最適な方法に至るまでには多くの紆余曲折があった。

あまりにも少ない「社会問題に関わる選択肢」

山本さんの大学時代の専攻は社会心理学。高校生のときから集団や社会のことに興味があり、読書でインプットをするのが好きで、日頃から世の中の出来事にアンテナが向いていた。そんな中で、今も昔も変わらず山積みとなった問題の数々に愕然とし、「自分は社会問題に対して何ができるのか?」と考え巡らしていたという。

 

「まずは行動に移してみよう」。国内外で清掃活動やまちづくりを行う団体の支部を自分の地域で立ち上げ、地下鉄の駅でゴミ拾い企画をして、地域住民と交流した。また時には、困窮者の生活自立支援に取り組む団体のボランティアにも参画した。しかし、草の根活動を続けていくうちに、現場でできることの少なさ、活動に参加する「ハードルの高さ」を痛感していった。

 

社会課題に取り組む非営利組織と外部の人々が協働する機会はボランティア、そして寄付の2つの選択肢が代表的だ。山本さんは「ボランティアと寄付の間にもう1つ気軽に関われる方法があればよいのに」という。日常生活で社会問題に関わる選択肢が少なければ、次第にその問題は社会からないことにされるかもしれないからだ。

それならば、より多くの人に社会問題に関わる機会をつくりだす必要があるのではないか。そこで、山本さんはあることを思いつく――「そうだ、人々の経済活動と社会貢献活動を結びつけてみよう」。

支援方法を模索する日々

実は今の会社を設立する前にも、会社員時代にいくつかの事業を立ち上げた経験がある。ひとつは、自動販売機に寄付ボタンをつくる事業に取り組むNPO団体。人々の「消費」という日常に介入し、「飲み物を買う」という行為に「社会問題との関わり」を結びつける工夫を凝らし、新たな寄付インフラの構築を目指した。しかし、あまりにも多い社会問題に寄付先団体を選定するのに一番苦戦したという。「社会問題が山積みすぎて、焦点をどこに当てるべきか?」「寄付文化が浸透していない日本にどのように寄付型自販機を普及させるか?」など、多くの課題に直面した。

 

NPO団体の設立に加え、コミュニティファンドの出資者として活動、また読書会やアイディア出しのワークショップ企画などを開催し、精力的に活動を続けた。「会社員としてビジネスもするけど、お金だけのための仕事はしたくない」。社会人になってもなお、学生時代に感化された社会起業家たちの思いを引き継ぐかのように、社会問題への関心の火種は消えることがなかった。

「継続寄付」という最良で最適な答え

「でも、正直疲れてしまいましたね」。ボランティア、NPO団体の設立など、社会問題と関わるあらゆる選択肢を実践してきたが、結局自分にできることは何かを悩み、葛藤し続けていた。自らが当事者ではない社会課題にも自発的に関わってきたものの、楽しい側面だけでなく「現実」と向き合うシビアな局面も多かったからだ。時間や労力を費やし、いつしか社会活動は義務感や自己犠牲では持続しないと気が付いた。「興味関心を維持し続けながら、楽しく、かつ気軽に社会問題と関わる方法はないのだろうか?」

 

そんな中で思い出したのが、大学時代に読んだ『あしながおじさん』――孤児院育ちの少女のもとに名を明かさない紳士「あしながおじさん」が現れ、彼女に奨学金を出す物語だ。山本さん自身は遺児ではないが、奨学金をもらいながら学生生活を送っていた経験がある。だからこそ、教育格差の問題は決して他人事ではなかった。また、「あしながさん」という寄付者の匿名性にも惹かれ、あしなが育英会の活動を応援することに決めた。「匿名で奨学生を支え、団体の活動を応援する。それが自分に一番合う社会問題との関わり方だと気づいたんです」

 

『あしながおじさん』書影

 

それからあしなが育英会やその他の教育団体、生活困窮者支援をするNPO、友人が取り組む活動などに継続寄付をはじめた。あらゆる社会問題に関心がある一方で、主体的に活動に関わることへの重みも過去の経験を通じ、思い知った。「それならば活動を応援する側に回り、寄付者として応援先を自分で選びたい」。そんな思いから辿りついた最良の選択肢が「継続寄付」だった。

「当事者ではないから」と距離を置く必要はない

寄付をしなければ、遺児の置かれる現状、生活困窮者の実態、子供の貧困…あらゆるテーマについて考えることも、知り得ることもなかったかもしれない。だからこそ、どこまで社会問題に精力的に取り組むかという力加減に悩むよりも、あらゆる課題を多角的に知り、「社会の解像度を高めていくこと」が重要ではないか。その上で「課題を知ること」自体に、当事者であるかないかは関係ないと山本さんは話す。

 

「強い当事者性や原体験、使命感を持つ人だけが応援すればいいわけではない。当事者しか関われないと決めつければ、視野はどんどん狭くなる」。各々の熱量が異なっていても、たとえ誰かが軽い気持ちで活動に参画しようとも、「活動に関わること」が何よりも価値があるのではないか――寄付活動を通じ、そう考えるようになったという。

例えるなら、きっと自分はアリーナの最後列

2020年度に本会を支援いただいた全国のあしながさんの数は約6万人。自らが遺児であったご経験から寄付を続けてくださる方も少なくない。「自分はそういう寄付者の方と比べると、熱量は負ける。6万人のあしながさんが集うアリーナのライブ会場だったら、自分の立ち位置はきっと最後列。でも、ステージから目をそらすわけではないし、ちゃんと会場にも足を運ぶ」。ステージから距離が遠くても、最前列に比べて熱狂的ではなくても、「応援したい」「興味がある」という気持ちは変わらないのだ。

 

「これからも社会を知りたいという好奇心、そして活動する人を応援したいという思いを大事にしていきたいです」。「強い当事者性」を持っていなくても、「団体を応援したい」という気持ちがあれば、誰でも活動に参画できる。「当事者だけが関わればいい」という思い込みをなくし、社会のあらゆる人々に遺児の置かれている現状を知っていただく――それこそが、本会が全国のあしながさんと「共に」遺児を支え続けるための第一歩なのだと、山本さんに教えていただいた。

 

文責:吉田 梨乃(アフリカ事業部100年構想第二課)

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