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「『ひとりじゃないんだな』と思えるようになったのは、今でも覚えています」

あしなが育英会の「心のケアの拠点」であるレインボーハウスのプログラムにおいて、なくてはならない存在である「ファシリテーター(手助けする人の意)」。子どものペースに合わせて、一緒に遊んだり、お話したりするファシリテーターは、子どもが自分の気持ちを表現するうえで大事な役割を担います。バックグラウンドは様々ですが、子どもたちに対する熱い想いは皆さんに共通すること。インタビューシリーズ「ともに」では多種多様なファシリテーターの方々に、どのようなきっかけでこの活動を始め、どのような気持ちで子どもたちと関わっているのかを伺います。

 

第一回は、8歳でお父さんを事故で亡くしてからあしながレインボーハウスに参加者として通い続け、2017年から「全国小中学生遺児のつどい」(以下つどい)でファシリテーターとして活動している大学4年生の田中優大さん(以下:ちょんちょん※)にお話を伺いました。

 

※つどいで、子どもたちや他のファシリテーターから呼ばれているあだ名。

帰る時間になると泣いていたつどい

 

「片親しかいないことからくる孤独感はあったので、つどいに来て『ひとりじゃないんだな』と思えるようになったのは今でも覚えています。一番印象的だったのは、学校では話せなかったような話に真剣に耳を傾けて、聞いてくれたファシリテータ―の存在でした」

 

そう話すちょんちょんが初めてつどいに参加したのは2009年。当時10歳だったちょんちょんは、あしながレインボーハウスの対象年齢である中学3年生まで、ほぼ継続的に参加してきました。

 

「みんなでご飯を作ったり、タケノコを掘りに行ったりしたのは楽しかったですね。そういう野外活動は、家ではできないので。毎回本当に楽しくて、帰る時間になると泣いていました(笑)」

 

毎回、ワクワクしながらつどいに来ていたと話すちょんちょん。子どもの頃をゆっくり思い出しながら、つどいの魅力やファシリテーターの存在について語ってくれました。

 

「自分の死別体験について話す「おはなしの時間」もファシリテーターがいたから、自分にとって落ち着ける時間、安らげる時間であったと思います」

 

つどいの最終日に、それぞれへの想いを込める寄せ書きの時間。3日間をともに過ごしたファシリテーターからのメッセージがたっぷり書かれた色紙は、今でも全部持っていると教えてくれました。

 

参加者から「支える側」へ

 

中学校を卒業してからは、本会の奨学金を利用し高校・大学へ進学。あしなが学生募金の活動に積極的に関わっていくなかで、ファシリテータ―を志す決断をしました。

 

「ファシリテーターをやろうと思ったのは、直接親を亡くした子どもたちと関わりたかったからです。僕が参加者としてたくさん助けられたご恩があるので、自分がしてもらったことを今の小中学生にしてあげるのが、お世話になった方への一番の恩返しになるんじゃないかという気持ちがありました。恩をもらった人が、また次の人に恩を送っていくことで、幸せが連鎖していくのかなと考えています」

 

海水浴のつどいにて

 

ファシリテータ―になってからは、夏休みも3連休も、友達との旅行よりもつどいを優先し、ほぼ切らさずに活動を継続してきました。子どもだった頃と顔ぶれは変わっていても、レインボーハウスで感じる優しさ、温かさはそのままだったことに感銘を受けたといいます。「人と関わる」ことの大変さを痛感しながらも、そういう関わりが、ファシリテーターを続けるうえでのモチベーションにもなると話してくれました。

 

「大変なことや、苦しいことはもちろんあります。つどいには色々な子が参加していて、テンションの差もそれぞれです。心を閉ざしている子もなかにはいます。そういう子たちが同じ班で2泊3日をずっと一緒に過ごすので、ケンカをしちゃうこともあって。他のファシリテーターと悩みながら試行錯誤しますが、やりがいを感じるので、やっていて良かったと思うことの方が多いです。回を重ねていくにつれて、子どもたちは身体だけでなく、中身も見てわかるように成長します。『ちょんちょんと話せてよかった』『また話したい』と言ってくれたときに、これからもファシリテーターとして頑張っていきたいなと思いますね」

 

海水浴のつどいにて、子どもたちと

 

「実際は、僕たちファシリテーターが子どもたちに助けられることも多くて」

子どもたちからたくさん良い影響を与えてもらったと話すちょんちょん。「ファシリテーター」として子どもたちと関わっていくなかで、その役割に対して考え方に変化が現れたとのこと。

 

「『学校でこんなことがあって、こんなことを頑張ったよ』『次はこれを頑張る』って、つどいの度に話してくれるんです。子どもたちがつどいで元気をたくさんもらって、その経験を日常に活かしているのを見て、僕たちも日常生活を頑張っていきたいなって勇気をもらえるんです。つどいは子どもが主役ですが、関わっているみんなにとっても、大切なものだと思います」

 

ファシリテーターは、ちょんちょんのように親との死別を経験している学生から、自分の子どもや孫を持っている年配の方までいます。つどいで一緒に時間を過ごしていくにつれて、子どもたちとだけではなく、ファシリテーター同士でもつながりを持つことが多いです。そんなちょんちょんにとって、一緒に活動をするファシリテーターの皆さんはどういう存在なのでしょうか。

 

「他のファシリテーターのみんなは、僕にとっての『仲間』ですね。友達とも家族とも違って。それぞれ経歴は違うけど、子どもたちを支えたいという一つの目標に向かって精進しあえる関係だと思います。ファシリテーターとして初めて参加する人には、『何か困ったことがあったら声かけてね、周りにたくさん仲間がいるから。』と伝えるようにしています」

 

ファシリテーターとしてたくさんの経験をし、日常生活でも人の話をまずは聞くようになったというちょんちょん。ご自身が大切にしている言葉を話してくれました。

 

「僕は『一期一会』をすごく大事にしていて。ファシリテーターに限らず、つどいに関わっている人たちと出会ったのは何かの意味があるし、そういう出会いは自分の人生に必ず影響を与えると思っています」

自分の心のコンパスに従って

 

レインボーハウスの参加者から、今は子どもを支え、支えられる側になったちょんちょん。来年の春には銀行への就職が決まっていて、卒業論文やアルバイトに勤しむ毎日だといいます。現在、新型コロナウイルスの影響でつどいが1年以上開催されておらず、子どもたちには会えていませんが、残り少ない学生生活は自分の人生を振り返って過ごしたいと考えているそうです。はっきりとした口調で「自分の心のコンパスに従って、今後の人生の航路を決めていきたいです」と話す様子からは、今後も色々な挑戦を重ねていく姿が想像できます。

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