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職員インタビューエンノシタ「どんな体験も必ず活きる」

職員インタビュー エンノシタ#1 「どんな体験も必ず活きる」

富樫康生 学生事業部奨学課(秋田県出身)

奨学課のお仕事紹介します

現在、奨学課で課長をしています。私自身も、あしなが育英会の奨学金を利用して、高校と大学に進学した元奨学生です。今日は、奨学課の仕事についてと、私自身のことについてお話します。

 

奨学課の仕事は、大きく2つの業務に分かれます。1つは、奨学金に関する業務、もう1つは、学生支援の業務です。1つめの奨学金に関する業務を説明しますと、奨学生の募集、採用、そして奨学金の送金になります。送金は、高校、大学、専門学校、大学院合わせて約7000人の奨学生全員に、期日にちゃんとお金を送ることが最も大事な業務となりますが、学生の異動、休学、復学、退学、奨学金の一時的な差し止め、奨学金の復活といった手続きや申請が年間で4000件ほどありますので、それも含めて管理しています。

 

2つめの、学生支援の業務は、奨学生が円滑に学生生活を送ることができているか確認することと、奨学金を利用するときの約束事項が守れているかを確認することです。毎年1度、必ず提出してください!と皆さんにお願いしている「生活状況報告書」や「学校成績表」は、奨学生がちゃんと生活できているか、単位が取得できているかの確認に必要な書類で、それら全てに目を通しています。せっかく進学しても、万事順調といかない場合もありますから、奨学生と色々な接点で関わって、無事に卒業できるよう、奨学金が受け取れるよう見守ります。

 

あしなが育英会では、継続的なご寄付をくださっているあしながさんに、年1回、奨学生から届いた直筆の「残暑見舞い」「年賀状」「卒業礼状」のいずれかをお送りしています。それを取りまとめるのも、学生支援業務の一環です。

あしなが育英会との関わりは奨学金

私があしながと関わりをもったきっかけは自分自身の高校奨学金です。私が中学校の修学旅行から帰ってきた翌日、父親が脳出血で倒れました。15歳の時の出来事です。身体障害1級の認定を受け、家で介護する生活が始まりました。そんな時に、中学校の先生から「こういう奨学金あるよ」と教えてもらって、申し込んだのがあしなが育英会との出会いです。

 

その頃の心細い気持ちは今でも覚えています。下に弟も妹もいる中、本当に生きていけるんだろうか…という漠たる不安がありました。母は専業主婦でしたし、何にせよ長男の自分が働かなければ、という思いが強かったです。だから、あしなが育英会の奨学金の話を聞いたときに「あ、これだ!」と思って、母に頼み込みました。母としては、公立校であれば大丈夫という目算はあったらしいのですが、なるべく負担をかけたくありませんでした。

 

高校に進学する段階では、卒業したら就職するつもりでした。だから、進学先は迷うことなく商業高校を選びました。仕事に役立つ簿記などの資格を取れるのが魅力でした。住んでいた地域に大学は無く、大学生もいませんでしたから、高校を卒業したら働くのが当たり前という感じでした。そういう思いで高校に進学したこともあり、高校生活はものすごく充実していました。部活動にものめり込みました。

 

高校に入ってすぐ、あしながから3泊4日の「高校奨学生のつどい」の案内が来た時、楽しくてしかたなかった部活動を4日間も休むことが考えらえず、行き渋っていました。すると、母が「あなたがどうしても借りたいっていって借りた奨学金なんだから、つどいにもちゃんと行きなさい!」と、いつになく強い口調で背中を押してくれたのです。内心は渋々、嫌々、重い足を引きずるように、高奨生のづどいに参加しました。

 

初めは自分を含めて誰もが不愛想な態度をとっていました。でも、同世代の人と遊んだり、体験談を聞いたりするうちに、気持ちが開いていきました。「あぁ、自分よりももっと大変な思いをしている人がいるんだ」という気づき。高校生を取りまとめる大学生リーダーたちを見て「ものすごく一生懸命相手をしてくれるなぁ。こんな人たちがいるんだ」という気づき。この人たちに会えるなら、また来年も来たい!と思って、つどいには毎年参加しました。

描いていた将来像が大きく変わったつどい

つどいの3年間を通して、1番大きな変化は、大学へ進学したいという気持ちが芽生えたことです。つどいは、大学生のリーダーと、高校生10名ほどが班を組んで、4日間の生活を共にします。もちろん、寝泊りも食事も一緒。プログラムを通してたくさん話して、笑って、泣いて、遊んで、ふざけて…濃密な4日間を過ごして、強い絆が生まれます。私は、高校生をまとめる大学生のリーダーに憧れて、自分もつどいのリーダーになりたいと思いました。そのためには大学生にならなくちゃいけない、大学生になりたい…という素直な思いで、大学進学を決めました。

 

大学に行くとして、大学へ行く理由が必要だな…とりあえず、学校の先生になるって言おう。じゃぁ、学部はどうする?と考えていくと、商業高校は一般の高校とはカリキュラムが違うので、一般受験をすることは難しくなるのです。数学でいえば、123,ABCとある中で、私は数1と数Aしか履修していなかったし、英語も確か123とか、いろいろ科目があったと思うのですが、そのうちの2つくらいしか履修していませんでした。その代わり、簿記とか情報処理とか、商業系の科目がものすごく多いのです。私は、日商簿記2級の資格を取得していたので、その資格をもって商業学部や経済学部の推薦入試に挑みました。私の周りで大学に進学する子たちは、そのようなルートを取る人が多かったように思います。

あしなが奨学生として揉まれ磨かれた日々

首都圏の大学に進学して、最初の1年は大学の近くでひとり暮らしをしました。憧れたつどいのリーダーにもなりました。2年生から学生寮(塾)に移り、ますますあしながの活動にのめりこみました。その頃を思い出すと、いつも頭に浮かぶ映像があります。

 

当時、Pウォークというチャリティイベントをあしなが育英会が運営していて、私は首都圏の学生代表になりました。ある定例会で、私は皆さんの士気を高める役割を任されていたのですが、それが上手く果たせず、落ち込んで帰路につきました。塾に着くと、当時の塾頭だった先輩が私の顔色を見て、すぐに「お前、大丈夫か?」と声をかけてくれました。気付いてくれたのがすごく嬉しくて、泣きながら話をしました。ひとりひとりをちゃんと見てくれる仲間のまなざし。さりげない優しさ。タイミングを逃さず声をかけてくれた距離感。その時の体験はすごく印象に残り、職員となった今も、学生と接するときの規範になっていると思います。

 

その後、先輩方に続け!という感じで、海外研修にも飛び出しました。あしなが育英会の職員となったのは、ある意味自然な流れでした。つどいや学生寮の担当となって、職員として学生を支える立場になり、東日本大震災の後は、震災遺児の支援事業にも携わってきました。

 

今となっては、どの体験も貴重で、全てが私の血となり肉となっています。その時はピンとこなくても、勉強や経験は後から役に立つものです。なにひとつ、無駄な経験はありません。

 

2011年には、職員として東日本大震災の現場にかけつけた(右から2人目)

あしなが奨学生のみなさんにメッセージ

親との死別や親の障がいを通して、皆さんも様々な思いを抱えることがあると思います。私は、日々送られてくる奨学金の申請書などを読んで、そんな皆さんと対話をしています。書類を通して、あるいは事務所にかかってくる電話を通して、保護者の方々がみなさんの幸せを心から望んでいて、皆さんが望む進路に進んでほしい、学びを得てほしいと願っていることも、強く感じます。多くの人の願いや希望をのせた「奨学金」を通じて、みなさんの学びがより良いものになりますように。陰ながら、お祈りしています。

 

 

執筆:田上菜奈(お母さん相談室) 聞き手:村本佑美(2023年度インターン)


あしなが育英会について

あしなが育英会は、病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたちや、障がいなどで親が十分に働けない家庭の子どもたち(以下、遺児)を、奨学金、教育支援、心のケアで支える活動をしています。

親を亡くした子どもの支援が特によく知られていますが、本記事でご紹介したように、親が障がいを持つ子どもも奨学金支援の対象となっています。死別の母子家庭、父子家庭の子どもに限らず、最近よく耳にする「ヤングケアラー」、児童養護施設で生活する子、兄弟だけで暮らしている子、祖父母家庭で育った子など、様々な家庭環境の子どもたちがあしなが奨学金を利用しています。

奨学金を利用したい方へ

高校・高等専門学校、短大・大学、専門学校・各種学校、大学院への進学を希望する遺児を対象とした奨学金制度があります。大学奨学生は、月額1万円で朝・夕2食付きの学生寮「あしなが心塾」(東京)、「虹の心塾」(神戸)に申し込むこともできます。

また、人生の友と出会い絆を深めるサマーキャンプ「奨学生のつどい」、国際的な経験を積み成長できる大学奨学生対象の「海外留学研修」など、さまざまな教育支援プログラムもあります。



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親を亡くした子どもたちの心のケアサポートをご希望の方へ

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次の5か所にあるレインボーハウスでは、親を亡くした子どもたちの心のケア(グリーフサポート)活動を行っています。子どもたち一人ひとりのグリーフ(grief:喪失に伴う様々な反応)を支えるため、子どもたちの身体の安全はもちろん、心の安心を感じてもらう環境を大切にしています。また、保護者向けのプログラムもご用意しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 


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◆オンラインで大学生が個別に勉強を見てくれる「ラーニングサポートプログラム」があります

親を亡くした小中学生の子どもと、本会の大学奨学生を中心としたラーニングサポーターが1対1のペアを組み、毎週1回、1時間の学習支援セッションを行うプログラムです。LSPの最大の特徴は、子どもたちと同じ遺児として、あしなが奨学金で進学をかなえた大学奨学生らが子どもたちの伴走者やロールモデルになること、そして継続的にオンラインで学習支援を行えることです。



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