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ここは何を話しても受け止めてくれる場所【ファシリテーターインタビュー vol.4】

あしなが育英会の「心のケアの拠点」であるレインボーハウスのプログラムにおいて、なくてはならない存在である「ファシリテーター(手助けする人の意)」。子どものペースに合わせて、一緒に遊んだり、お話ししたりするファシリテーターは、子どもが自分の気持ちを表現するうえで大事な役割を担います。バックグラウンドは様々ですが、子どもたちに対する熱い想いは皆さんに共通すること。インタビューシリーズ「ともに」では多種多様なファシリテーターの方々に、どのようなきっかけでこの活動を始め、どのような気持ちで子どもたちと関わっているのかを伺います。

 

第4回は、神戸レインボーハウスでファシリテーターとして活動しているアヤカさんにお話を伺いました。アヤカさんは兵庫県内の大学に通う大学4年生。大学1年生のときの2018年から約4年間ファシリテーターとして参加。大学卒業を迎える今春で、ファシリテーターとしての活動も一区切りの予定です。そんなアヤカさんのファシリテーターとしての4年間の歩みを紹介いたします。

レインボーハウスとの出会い

 

最初にレインボーハウスを知ったきっかけは?

大学の授業であしなが育英会の職員がゲストスピーカーとして震災や遺児の話をしていたのがきっかけです。私はマイノリティに関することに興味があったんですが、こういう形もあるのかと印象に残りました。自分は今まで経験していないけど、もしかしたら周りにいるかもしれない、とその時すごく考えました。

 

 

そこから、レインボーハウスの活動に関心があると、伝えてくれたよね。

はい。高校の時にカンボジアで10日間子どもたちに日本語を教えたりするボランティアをしたことがあったんです。私にとっては学びになったんですが、子どもたちにとって本当に意味のあることをするには、継続的に長く寄り添う必要があると感じて。そんなことを考えているときに、ドンピシャでレインボーハウスのことを知ったんで、大学のコメントペーパーに連絡先を書いて見学させてもらいに行きました。

 

 

見学、養成講座を終えてどうだった?

けっこう連絡先は勢いで書いたんで(笑)、見学のときはあんまり子どもたちと関わるっていう実感がなかったんですけど。養成講座を受けて、子どもたちのことを学んでいくうちに、よりレインボーハウスの必要性を知って、「ちゃんとやらなきゃ」って気持ちになりましたね。講座でエネルギーを合わせるであったり、言葉のリフレクションをすることは新鮮でしたし、絵を使ったワークをすることで、「自分の価値観押し付けていたかも」っていう気づきがあって、2日間みっちり学びになりました。

 

ファシリテーターとしての歩み

 

プログラムに参加して、ファシリテーターとして子どもと実際に出会ってどうだった?

「自分の関わりがこれで大丈夫かな」っていう不安はありました。自分は両親との死別経験があるわけではないし、そういうことを学んできたわけではないので、「自分がいていいのかな」っていう感じでした。おままごとごっこを子どもとしているときに、登場人物にお父さんが出てこなくて。こういうことなんだと実際に触れたりもして、緊張しました。

最初、他のファシリテーターが気づいていることも自分は全然気づけていないなと思うこともあって難しさもありました。

 

 

それでもファシリテーターとして関わりを続けてくれた

一番の理由は、関わっているうちに、ちょっとした子どもたちの変化や成長を感じることが嬉しかったからです。最初は全然意思表示しなかった子が少しずつ話をしてくれたり、参加するにつれて遊びがどんどん自由になって楽しんでいる様子を見て、こんな感じでいいんかなって思えるようになりました。それに気づけている自分への喜びというか、やりがいみたいなものも少しずつ実感できるようになりました。

 

 

印象的なこと、嬉しかったことってあった?

自分の似顔絵を子どもが描いてくれたのは嬉しかったです。子どもたちが長いこと続けているファシリテーターの絵を描いたりするのは見ていたけど、最初はやっぱり私の絵を描いてくれたりすることはなかったので。帰りに絵の写真を撮っちゃいました(笑)

あと、レインボーハウスに来たばっかりの女の子が、勇気を出して他の子どもを遊びに誘って、一緒に遊んでいるのも、ここだから安心して出来たのかなって思いますね。

 

子どもと一緒に絵を描いて遊ぶアヤカさん

 

それに今でも気づくこと、学びになることはたくさんあります。おはなしのじかんで子どもたちが亡くなった親のことを話した後に、子どもたち2人で火山の部屋でパンチしてたりしているのを見て、こういう表現の仕方もあるのかって発見があってとても印象に残っています。自分の価値観を押し付けないことの大事さを改めて考えました。

 

 

関わりで気をつけていることは?

子どもたちの邪魔にならないようにじゃないけど、子どものペースを崩さないことは意識しています。例えば、おはなしのじかんで亡くなった親について紙に想いを書いたりするとき、書き始めた子には横にいるだけというか、あれこれ話しかけたりはしないようにしたりとか。逆に書けてなかったら「どんな感じ?」って聞くようにしています。

 

子どもとお話するアヤカさん

 

あと、ある子がお菓子を貰うときに、「私とお母さんと、お父さんの分。でもお父さんいないからこれも私の分」って言ってお菓子を貰ってたんです。学校だとそんなこと言えないだろうなって思って。子どもたちに安心してもらうことは大切にしています。

 

 

一緒に参加しているファシリテーターはどんな存在?

心強い存在です。自分が気づけないことを気づいたりっていうのもありますけど、包容力というか、始まる前でも全然ピリピリせず和やかなので、とても安心できる存在で心強かったです。

ファシリテーターを振り返って

 

ファシリテーター、レインボーハウスは子どもたちにとってどんな存在?

ファシリテーターは、「他人だけど身近な大人」ですかね。レインボーハウスは自分を受け止めてくれる場所。なにを話しても受け止めてくれてくれる場所があることはすごく良いなと思う。その中で、自分もその場所づくりに関われているっていうのも嬉しい。

あるとき、参加している高校生が「ファシリテーターだから話も聞いてくれるんでしょ?」ってちょっとネガティブな感じで話していたんですけど、「ファシリテーターだから聞いてくれる」ってわかってるってことだよなって。だから家や学校で話せないことをここでは安心して話せるんだなって思ったんですよね。第2、第3の家じゃないけど、レインボーハウスをいつでも帰ってこれる場所って思ってくれたら嬉しいですね。

だから、子どもたちの成長というか、この場所があり続けることが、今来てる子どももそうだけど、これから来る子どもたちにとっても大切だと思います。

 

それに、レインボーハウスは親を亡くした子どものための場所だけど、どんな子どもにも困っていることや悩んでいることを受け止めてくれる場所って必要だと思うから、そういう場所がもっと増えれば良いな、と活動を続けていくうちに思うようになりましたね。私も集団行動とかあんまり得意なタイプじゃなかったんで、子どものときにレインボーハウスみたいな場所があったら良かったなって。特別しんどかったってわけではないですけど、転校とかもしたので、無条件に話を聞いて頼れる場所って大切だなって。

 

 

アヤカさんにとってレインボーハウスで過ごすことはどんな時間だったのだろう?

仕事でもない、友達と遊んでいるわけでもない、学生団体でもない特別な時間でした。誰も知らない所へ自分から飛び出した思い出深い場所です。毎回、チェックイン、チェックアウトをして自分の気持ちを言語化して整理できた場所でした。社会人になっても自分の気持ちに気づくことを大切にしたいです。

 

 

この3月でファシリテーターとしての活動は一区切り。今後は?

はい。4年間活動して、やっぱりファシリテーターとして活動するためには、自分のコンディションが大事って学んだので。仕事が始まって余裕がないと思ったので、余裕が出るまでは一区切りとさせていただきました。

今後は、人材系の会社で転職支援などをしていく予定です。人と喋る仕事なので、価値観を押し付けずに、その人にとって話しやすい相談しやすい相手になりたいなって思うので、ファシリテーターとしての経験も活かしたいです。

 

 

 

インタビュー終了後、笑顔でポロっとアヤカさんがつぶやいてくれた。

 

すごい楽しかったです、レインボーハウス。子どもたちと遊んで、おはなしして、お菓子食べて。レインボーハウスから帰るときも「今日のボール遊び楽しかったな」って。偶然見つけたレインボーハウスだったけど、子どもたちと過ごせて良かったです。

投稿者

高橋 耕生

高校生のときに友人を亡くす。以来、死別を経験した人へのサポートについて学びながら、神戸レインボーハウスのファシリテーターとしても活動。 現在は職員として、一人ひとりの遺児と向き合い、グリーフサポートプログラムの進行や運営を主に行っている。

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