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大学進学をあきらめようとしている君へ|玉井義臣より VOL. 7

コラム 2021.11.10

コロナウイルス感染の勢いがようやく下火となり、経済活動も少しずつ回復しつつありますが、遺児家庭の生活は苦しさを増すばかりです。
そんな中で、父親や母親の経済的負担を思い、大学進学をあきらめている人もいるのではないかと心配しています。
玉井会長はご自身の体験から「大学時代の遊びですらやがて花咲く」と、みなさんに強く大学進学をすすめています。玉井会長があしなが運動を起こし推進したエネルギーは、大学時代の遊びや読書、映画三昧で養ったものから湧き出たものだからです。
遺児高校生のみなさん。どうか、目先の生活苦に負けないで、この先の長い未来を見据え、大学進学を目指してください。そして、よりよい社会創造を担う人になってください!

 

2017年(平成29年)11月1日(11月号)

 

玉井 義臣 

 

 

 遺児に大学進学をあきらめさせてはならない。絶対にあきらめさせないで!

 大学進学しても遊ぶだけなら行かない方がまだいい、という意見があるが、私は真っ向から反対する。ものを考えられるようになる20歳前後に、4年間という“黄金の時”をもらうのだから、極論をいえば、大学の授業をまったくとらずに、スポーツに打ち込んだり、うんと本を読んだり、新聞を読む、友達と真剣に人生を語り合うなどをするならば、そこから得られるものは、無限の可能性だと僕は信じる。

 だからどんな事情があっても、もう一度立ち止まって考えてほしい。

 進学できない理由は何なの? 勉強がイヤだから。借金をたくさんしたら、返すのが大変だから。お母さんを早く楽にさせたいから、いやこのほかにも、僕には知るよしもない理由があるに違いない。

 それを承知で、僕の話をきいてほしい。僕は11人きょうだいの末っ子だった。“貧乏人の子沢山”で、僕以外の兄や姉は小学校か高等小学校(8年)しか出ず、出ると口減らしで奉公(子守や女中)に出され苦労して、同じ下層階層同士で自分の選択権もなく結婚させられ貧困の連鎖を引きずって生きてきた。太平洋戦争中や戦前戦後ではどこにでもあるケースだった。

 2人の兄がいた。上の兄寛一は10歳違い。下の兄孝一は6歳違いで、高小(高等小学校)をでてある大機械メーカーに入って職工になった。会社には青年学校といって企業内教育制度があった。真面目な次兄はいつも一番だった。班長に昇進したときに150人ぐらいの班員がいた。そして係長になって事務職に。出世である。50歳をちょっとこえていた。高小卒業から35年の職工暮らしだ。大学出のばあいは20歳台の後半で係長になれたという。僕にでもわかる学歴の壁の厳しさと思った。その兄もがんで死亡。残ったのは長女、短大出。長男は四大マン研からプロのマンガ家になるも早逝。次男は四大を出て起業中。

 長兄も高小程度の学歴で電鉄に就職。車掌をしているとき見切りをつけ、父の金網商店を継ぎ、よく働いた。この長兄が「お前(僕のこと)ぐらいは大学を出ておいた方がいい」ときょうだいで一人だけ進学させてくれた。にもかかわらず、大学入試に失敗して迷走していた。でも読書は1日5~6時間基礎教養書や文学、宗教書をしっかり読み込んでいた。これが大学での遊びの中での学びなのであろうか。

 母の交通事故の看取り中さまざまな疑問を感じ「お母ちゃん、敵(かたき)は打ったる」と言わせたのと、その後の一年半ばかりの猛勉に耐える基礎はできていたのだろう。だから、論文を書き日本初の交通評論家になれた。大学時代の遊びですらやがて花が咲く、と僕は思うからこそ、大学進学をあきらめかけている、君に心からの忠告をしたいのだ。わかってほしい。しかも、ただ進学をあきらめないでといってるわけではない。

 あしなが運動約50年の思い切った改革を奨学金制度に当てて、大学進学をすすめているのだ。「給付型の奨学金制度」を新設し、各種奨学金を6割方引上げ、教育費に生活費を上乗せし返還不要とし、従来分だけの貸与に、給付を足して2階建てにした。2階の給付分を生活費に当てればアルバイトはしなくていいか、相当時間減らせる。それが狙いだ。節約はしてもらう。

 高校奨学金から大学院奨学金までこの方式でやるのだから、奨学生が増えなくても、年間15億円から20億円の負担金増となる。あしなが育英会はその我慢ができる体質に育ちつつある。僕らはそれだけの用意をして「大学をあきらめないで」と君たちに呼びかけているのだ。

 その支出増加分の20億円プラスマイナス5億円を覚悟しながら、募金を学生募金だけでなく、あしながさん募金や遺贈を広く呼びかけたい。

 皆さん、もう一度言う。大学進学をあきらめないで!!

不安な点は進学してから考え、運動し社会を変えよう。

 新年号では、日本社会をやり直しのできる奨学金制度を考えていこう。乞うご期待。

 

   (2017・11・2記)

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